法務局で名寄が取得できるようになります!(2)

query_builder 2021/06/02
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「固定資産税・都市計画税納税通知書」の欠点を補うもの、それが「名寄帳」です。「名寄帳」には、未登記建物や非課税不動産(私道等)、共有不動産も全て記載されるため、被相続人が所有している不動産を網羅的に把握するためには、最も適している資料といえるでしょう。

ただし、「名寄帳」は自宅に送られてくるものではなく、自ら市区町村役場に出向く必要があります。取得のためには手数料を支払う必要がありますが、1通200~300円程度です。一部の自治体では、無料で閲覧できる期間を設けているところも多いので、お住いの自治体に一度問い合わせてみてはいかがでしょうか。

注意点としては、自治体によって「名寄帳」という呼び方をしていない場合があり、「固定資産課税台帳」とか「土地家屋課税台帳」といった呼び方をしていることがあります。とはいえ、資産税課の窓口で「名寄をください」といえば、表題はともかく、「名寄帳」と同様の書類の閲覧・取得ができるはずです。

また、そもそも「名寄帳」を取得できない自治体がありますので、事前に取得ができるかどうか自治体に問い合わせてから出向いた方がいいでしょう。

被相続人が所有している不動産を網羅的に把握することを目的とする場合には、最も適している資料といえる「名寄帳」ですが、次のような欠点もあります。

一つは、それが市区町村単位でしか発行されない点です。通常、不動産の多くは自宅のほか、その近辺に所有する場合が多いと思いますが、なかには自宅から離れたところにある農地や山林等を所有している場合もあります。この場合は、被相続人がその土地を所有していることを相続人の方が知らない限り、把握できないことになります。

次に、「名寄帳」は、毎年11日時点の情報で作成されます。12日以降に取得した不動産は翌年まで名寄帳には記載されません。この点は、「固定資産税・都市計画税納税通知書」の場合と同様の欠点があります。例えば、被相続人が相続税対策のため、急遽不動産を購入した場合は、相続人がその情報を知らない限り、売買契約書や請負契約書を探すなど別の方法で捜索しなければならないことになります。(相続税対策で購入することを相続人が知らないことはまずありえないと思いますが……。)

そして、「名寄帳」は、冒頭でも申しあげたとおり、共有不動産も記載される資料ではありますが、被相続人が単独で所有していた不動産と共同で所有している不動産のそれは別々に作成されているため、別個に請求する必要があります。 そして、その共有者の中で代表者が指定されている場合には、市区町村によっては、その代表者の名前を伝えないと交付されないなど、例外的な対応がされる事もあるので注意が必要です。

以上のとおり、「固定資産税・都市計画税納税通知書」にしろ、「名寄帳」にしろ、場合によっては被相続人所有の不動産を把握しきれない可能性のある資料であると言えますが、最近、これを補完するような制度が将来創設されようとしています。

それは、所有不動産記録証明制度(仮称)といいます。相続登記の申請を促進するため、国内にある不動産で、自己を登記名義人とする不動産の一覧を発行できる仕組みが新たに設けられることになりました。この制度の一環として、所有不動産記録証明書(仮称)が登記所で発行されるようになります。

まだ、不明な点も多いのですが、次のような制度設計が想定されています。

➀所有不動産記録証明書(仮称)の交付請求時には所定の手数料を納付することが必要になります。

➁所有不動産記録証明書(仮称)の取得は所有権の登記名義人又はその相続人のいずれかの者に限られますが、委任を受けた代理人も請求することができるとされています。

また、所有権の登記名義人には、表題部所有者や法人も含まれると考えられます。

➂取得できる登記所は、法務大臣の指定する登記所に限られます。

注意点としては、登記名義人が氏名(名称)や住所(本店)を別々に登記していた場合、つまり、Aさんが、従前取得した不動産をB市の住所で登記していた場合に、新たに取得した不動産をC市の住所で登記したような場合は、別人とみなされ、所有不動産記録証明書(仮称)の一覧性が意味のないものになってしまいます。ですので、不動産を売却する時だけではなく、氏名(名称)や住所(本店)が変わった場合は、こまめに変更登記を入れておくことが大切になります。

なお、相続登記だけでなく、住所変更登記も義務化されるようですので、済んでいない方がいらっしゃいましたらお申し付けくださいませ。


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